本の収集と処分と、その関係者の話
本の遺品整理で呼ばれることは多いです。お客様から直接お呼びいただくこともあれば、業者さんからの依頼もあります。一部屋に収まることができれば1,000冊、多ければ複数の部屋にわたり、数千冊ということも珍しくありません。
当社では、冊数が多い場合、まず現場を見せていただくことが多いです。実際に見て、搬出にかかる時間とおおよその査定額を見積もり、その後、搬出の日を別途設定します。量が多いと、どのような車で何人で伺えばいいのか、電話だけでは判断が難しいからです。
本の遺品整理の依頼者であるお客様は、ほとんどが親族の方という印象です。本の収集家の方が亡くなられた場合には、その壮絶な状況が語られます。「生前は本が好きで、狂ったように本を買い続け、毎日のようにAmazonから本が届いた…」そんなエピソードをよく耳にします。
気づけば本棚は機能を果たさず、本棚の前にも本が積み上がり、廊下や階段へと侵食していく…。最初は笑い話かと思いきや、親族の方が真剣な顔で語るその話を毎日のように聞いていると、これは非常にシリアスな問題なのではないかと思い直すようになりました。「本が家の中で増えすぎて、身の危険を感じた」と話された方もいました。本好きの情熱が、時には恐ろしい事態を引き起こす。何事も程度を過ぎると危険なのかもしれません。
実は今年の4月に同じような危機が当社にも訪れていました。
新潟の3~4月といえば引っ越しシーズンです。場所によってはもっと早いこともありますが、当社でもこの時期は例年、買取の依頼が増えます。今年は特に多く、楽しく買取をさせていただきましたが、5月に近づくとスタッフの顔色が悪くなってきました。捌き切れない本の量に不安を感じていたのでしょう。妻からも「これ少しセーブしたほうがいいんじゃない?」と愚痴が出始めました。
そんな時、電話が鳴ります。200箱近くの140サイズの段ボールに本が入っていると。内容を聞くと面白そうな本が多く、ぜひ買取りさせていただきたいと思いました。しかし、出張買取の依頼は2週間先まで埋まっており、会社の本が減る見込みはありません。一旦電話を切り、その話をスタッフにすると皆が「もう無理です。これ以上の本を置く場所はありません」と口を揃えました。
必死で本を仕分けしていると、何とか200箱を置けるスペースができそうな場所を倉庫内で発見しました。「やった!」と急いで電話に走ると、妻が真剣な顔で「ちょっとよく考えてみて。これ以上の本を置くのは無理でしょう」と電話に伸びる手を掴みました。
その瞬間、思い出しました。どんどん本が増えていき、置き場がなくなり、通路にも本が侵食してきていること。スタッフが「本が会社の中で増えていき、身の危険を感じた」のかもしれないということ。
生前、狂ったように本を買い続け、本棚からあふれ出て廊下にまで侵食してくる本。そして残された方がその本の処分に困り、当社を呼んでいただきます。しかし、奇妙なことに私もまた同じように本を買い続け、社内に恐怖を与える存在になろうとしているのです(結局200箱は買取させていただきました)。
はなひ堂ブログ 2025年9月18日