古本の真贋(再流通できない本)

furuhon200826


こんにちは。
はなひ堂新井です。


先日ネットで業界の情報をチェックしていると「古本の真贋」というワードが目に飛び込んできました。


よく読んでみれば、とあるマーケットプレイス上での規約についての話だとわかりましたが、私としては「古本の真贋」とは何だろうかと改めて考えてみるきっかけになりました。


そもそも古本業界にはサイン本等、真贋に関わるものもあるにはありますが、私の個人的な感想としましては「実際の本の完全なコピーである偽物」という本物の偽物(?)はほとんどなく、それらは落丁を別にすればほぼ無視できるような数しか現存しないと思っています。


その理由は日本の出版業界の構造と、本自体が非常に安いのが理由ですが、その辺の話は長くなるので置いておきます。


私が「古本の真贋」というワードを見たときに思ったのは、そのワードの対象となるものは「実際の本の完全なコピーである偽物」ではなくて、「実際の本ではあるが古本として市場に流通させてはいけないもの」なのだろうということです。


「偽物の本」というふうに古本の真贋をとらえてしまうと、その対象は非常に少ないですが、「流通させてはいけない本」としてとらえると、その数はそこそこあるだろうと個人的には思っています。


そしてそれらの線引きは非常に難しい場合もあり、古本屋によっては買取りできたりできなかったりと判断の分かれることもあることから、これらを改めて整理してみるのは重要だろうと思った次第です。


そしてこれら基準はあくまでも当店のもので、他のお店がどうかはわかりません。線引きが微妙なものも多数あるので、どのようにとらえるかはそれぞれお店の判断基準があるだろうからです。




1. 「〇〇先生へ」…著者からの謹呈サイン本


専門書などでよくあるのが、著者から業界関係者へ謹呈サインを書いて送られる本です。見返しに「〇〇先生へ」と個人名が書かれています。


これらは当店では買取りできないものとしています。


その理由は個人情報が書かれているというだけでなく、これはさすがに市場に流通させるべき本ではないだろうという判断からです。


もちろん売り主様である「〇〇先生」が「そのまま売ってもいいよ」と言った場合はどうすべきかはわかりませんが(^_^;)、私の知る限りそのようにおっしゃった先生は一人もいません。みなさん口をそろえて「もしも見つけたら処分してください」とおっしゃいます。


そして「〇〇先生」がお亡くなりになり、遺族の方が処分されるケースもあります。そしてこの場合も「売ってもいいよ」とおっしゃった遺族の方はいません…。


果たしてこれが著作権等に関係している複雑な話なのか法律に明るくないので判断できませんが、「著者からの謹呈サイン本は販売不可」。これらは当社全スタッフに浸透しています。


そしてこのことは奇しくも当店がサイン本に強くないことも表しています。では近代文学の謹呈サイン本ならどうか、著名なアニメーターならどうか…など、実は「著者からの謹呈サイン本は販売不可」と力強く言うことは微妙なラインに存在している希少性を見逃してしまうことでもあるからです。うーん。


また本に名前が書いてる、蔵書印がある等はまた別の扱いになります。ご興味のある方は「名前が書いてある本は売ることができるかどうか」をご覧頂けますと幸いです。




2. サンプルとして配布された教材


一般的にはあまり馴染みはありませんが、学校の先生方に次年度の補助教材として売りに来られる営業の方がもってくるのでしょうか、表紙や見返しに「見本品」というラベルが張り付けられている本があります。


ただただ「見本品」というラベルが張り付けられているだけではありますが、これらは当店では買取できません。


上手に剥がせれば当店では見分けがつかないので(なぜならばシールが貼ってあるだけですので(^_^;))、一体これを買取りできないというのはどういうことだろうと一時期真剣に悩みましたが、本にラベルを貼ることには強烈な意志を感じます。


「見本品であり正規の品ではありません」という前所有者の意志です。前所有者の意志を引き継げなくて何が古本屋か。


というのは半分冗談で半分本気ですが、とにかく「見本品」とラベルが付いている、またはスタンプで押してある場合には買取りできません。




3. 今のご時世にふさわしくないと思われるもの(グロテスクな画像等)


この辺も微妙なところですが、こちらも内容次第では買取りが難しい場合もあります。


特に70年代、80年代の雑誌なんかは自由すぎて目も当てられないくらいの表現があることもあり、とはいえそれが魅力になっている場合もあるのですから、表現というのは難しいものです。


ただ、こちらは1番とは違って当店では微妙なラインを見極める力を極限まで振り絞って、ときにはスタッフと激しく議論して見極めようとしています。


かつてはよかったとしても、今の視点からはタブー視される表現というものは少なからずあります。買取できるかどうかにつきましては、お気軽にご連絡頂けますと幸いです。



色々と買取りできないものを書きましたが、本の処分はそれらを分ける手間も膨大になる場合も多くあります。


その場合は本棚に入っている状態から、全てお近くの古本屋にお任せください。買取りできるものとできないものを仕分けるところから作業させていただきます。

はなひ堂ブログ 2020年8月26日