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冊数の多い出張買取

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こんにちは。
はなひ堂新井です。

「だいぶ処分したんですよ。この3倍くらいはありました。」

先日千冊弱の本の出張買取に伺った際に、お客様がおっしゃりました。

それを聞いて「残念でした、早くお呼び頂いて全ての本を見たかったです」とお伝えすると、「いやー、そういう状態じゃなかったんですよ」とお答えになりました。


出張買取ではよくある光景です。

定期的な発言になりますが、古本屋は本を処分しようと思ったその瞬間に呼んでいただけると助かります。

それはつまり処分しようと思う本を全て見せていただきたいということです。

(これを口に出す度に古本屋の都合が前に出過ぎていて身勝手な発言であることに大変申し訳なく思います。ただ一つだけ言い訳じみたことを言わせてもらうと、我々はお客様にサービスを提供するのが第一ではありますが、本を救い出すというのが二番目にあります。それだけご了承いただけますと幸いです。)


古本屋を呼ぶ前に少しは整理しておこう、汚い本は捨てておこうとお考えの方は多いと思います。

少しでも古本屋の手間を減らしてあげたい…そのお気持ちは大変ありがたいのですが、それでも処分する本には手を付けないでいただきたいというのが正直なところです。

もちろんお客様にはそれぞれ事情がありますので、そのようにいかないことも多いかと思います。

ただ、本棚に入ったままでいようと、段ボールの中にあろうと、埃をかぶっていようとも、処分しようと決意されたその瞬間にお呼びいただけることが古本屋にとっては一番ありがたいことです。

それは、お客様が捨ててしまう中に「よい本」が入っているかもしれないということが理由なのですが、その「よい本」とは一体何なのかというのはなかなか一目ではわかりません。

そしてその「よい本」というのが曲者で、それは大概「本の相場」のことを意味するのだと思うのですが、場合によっては価値のない本でも「よい本」である場合があるのです。

一体何のことを言っているのかと思われるかもしれませんが、それを具体的にイメージしていただくために今回はある例を挙げてみたいと思います。


当店は古本の交換会に出品することがあります。

交換会というのは一言でいうと本の競りのようなものです(競りでよく知られているのは魚だと思うのですが、それが本に変わっただけとお考えください)。

そして本の場合は1冊で出品されることもありますが、何冊も縛った状態で出品されることもあります。

そして業者はその何冊も縛ったもの、それを通称「山」といいますが、それを競って落札額の最も高い業者が落札することになります。

当店は基本的に自店で不要な在庫を交換会に出すのですが、まれにウブい山を出すこともあります。

「ウブい山」とは業界用語で「買取されたものをそのまま出された山」を意味するのですが(なぜ2017年にもなってこんな昭和的な呼び名が使われているのかさっぱりわかりませんが、業界的にそう呼ばれているのですから仕方ありません(^_^;))、当店では買取したものは9割方自店で販売します。

ただ古本屋とは「本の時」を扱う職業であり、交換会とは「本の時空をゆがめる行為」なので、まれにウブ荷を出すことがあります。

何を言っているんだ?と思われるかもしれませんが、この話は長くなってしまいますのでこのまま先に進みます。


最初私は「同業者に出すのに価値のない本を混ぜるのは失礼だ。事前に価値のない本を処分してから出品しよう」と思っていました。

そして最初はそのように出していたのですが、ある時にふとした気まぐれから、ウブ荷を何も手を付けず出品したのです。つまり価値のない本をそのまま混ぜて出品したのです。

そしてその時に感じたのは「同業者はウブい荷に事前に手を付けられるのを極端に嫌がる」ということでした。

それからは考えがガラリと変わり、今では「ウブ荷を出す際に一番やってはいけないことは、相場として価値のない本を事前に抜いてから出品すること」ではないかとも考えるようになりました(ここでは同業者への弁明が必要になるかと思いますが、今回は省きます。ただ当店は業者市では全く価値のないと思われる山は絶対に出しません)。


これはいったいどういうことなのか。

価値のない本を処分しても山の価値は変わらないはずです。

それなのに価値のない本を処分すると山の価値は下がるのです。

そこではいったい何が起こったのか?

考えられることはただ一つではないでしょうか。「相場で見れば価値のない本ではあったが、その山にとっては必要な本だった」と。


漫画「ハンターハンター」25巻ではネテロ会長が山籠もりするシーンがあります。

あまりにも有名なシーンですが、簡単に説明するとネテロ会長は己の限界に気付き、「感謝の正拳突き」を一日一万回行うことになります。

その「感謝の正拳突き」とは、手を合わせて、拝み、それから正拳突きを行うというものです。

そしてその正拳突きは、どの正拳突きよりも速いのです。不要にも見える「手を合わせて、拝む」という行為を正拳突きの前に入れることによって最速となるのです。

逆に言うと「手を合わせて、拝む」という動作がない時の正拳突きは遅い。不要にも見える行為を削ったがゆえにその正拳突きは遅くなるのです。

私もそうだったのではないか。

ウブ荷から価値のない本を取り去ることによってその山の価値を損なわせていたのではないか。


またはドゥルーズ(だったと思う)の言う「動かずとも最も勢いのある状態」。

その状態から加速し、どんどん速度を上げていくとして、最速になる頃には摩擦や空気抵抗によって当初のエネルギーを失ってしまっている。

つまり最も勢いのある状態とは、動かずにいる時だった。

私はその最も勢いのある荷から価値のない本を取り去ることによって荷の勢いを削いでいたのではないか。


本の処分は思わぬところで出くわすことになると思います。

例えば持ち主が片付けられない状態になり、その親族が片付けることになる。

その時に本棚びっしり詰まった本に圧倒されることになると思います。

または本棚には本ではなく小物類が乗っている、またはパンフレットやチラシや週刊誌、または名簿類などが住んでいるかもしれません。

「このままではまずい、古本屋を呼ぶ前に少し片づけなければ」

そう思って不要だと感じる本を処分し始めることと思います。

しかしまさに親族の方が圧倒されたその状態とは本たちの「最も勢いのある状態」なのではないでしょうか。

持ち主の作り上げた最も勢いのある状態がそこに表現されていたのではないでしょうか。

そしてできることならば、その状態で古本屋をお呼びいただけますと幸いです。

もちろんお客様の都合が最優先なのは存じておりますが、本の処分時に少しでも思い出していただけますと大変ありがたく思います。

はなひ堂ブログ 2017年8月28日