もっと潜ってみよう

今年の4月から「おかあさんといっしょ」の体操のメンバーが入れ替わりまして、それに伴ってエンディングの歌(?)も変わりました。


その曲名は「からだダンダン」、だそうです。


だそうです、と言っておきながら当然我が家のTVでは毎日のように「おかあさんといっしょ」が流れています。2歳の息子は毎日全力で踊っていて、4歳の娘も気が向いた時には踊っていてそれを私と妻が微笑ましく見ている(時間があるときは)という風景を今年も幾度となく繰り返してきました。


そんな「からだダンダン」ですが、今年の4月の話を今更なんだと思われるかもしれませんが、年の瀬も迫っている今になって私もぼんやりと見るともなしに見ていると、杏月お姉さんの「もっと潜ってみようー」というセリフに少し驚かされた、というのが今回の話です。


自営業をやっていると当然のことながら毎年色々とあって、今年も色々とあったのですが、端的に言うと今年は本格的にある種の本が売れなくなっていることを実感した年でした。


「ある種の本」と書きましたが、その内実は一言では言い表せないのでそれについては割愛させていただきますが、とはいえ全ての本が売れないのかといわれるとそうでもなく、定番で売れる本も多々ありますし、年々相場が高くなってきているように感じる本もそれなりにあるように思います。売れる本と売れない本を仕分けるという古本屋として当たり前の作業を今年もしてきたつもりです。


そして私自身は8年目ということで円熟味を増してきた…というわけでは全くなく、未だ見たことのない本と対峙することがあるという現実に呆然とすることもしばしばあります(ですが相場の見当も付かないような山を目の前にするということはほとんどなくなりました)。


それと合わせてネット古本屋の常ですが、PC周りの作業もOCRバーコードリーダーの物色をしたりvisual studioをいじってみたりと、なかなか外部に頼みづらい小さな作業に試行錯誤したりもしていました。


色々な作業の連続で仕事としては中途半端に見えるかもしれませんし、「迷走」とも言うことができるかもしれません。ですがこの業界では売上げを爆発的に上げる術はないように思います。ある種のポジショニングをした後は、それほど売り上げの変化がない日常(もちろん何も変化しなければ下のほうに変化しますが(^_^;))が待っています。ある種のポジショニングをしたあとはどのように舞うか、それともポジショニングし直すか、それに尽きるというのが私の見立てです。そしてそれはどの業界でも一緒なのではないかとも思いますがいかがでしょうか。



そんな年末も差し迫った朝、いつものように子供たちと「からだダンダン」を見ていますと、杏月お姉さんが言いました。「もっと潜ってみよー」。


相場も技術も変化するし、それに対応しつつ(できているのかわかりませんが)古本の中で戯れる。そして未だ知らない本を探すべく出張買取や市場に向かい、宅配買取で届いた本に驚く。古本業界は成熟産業というよりは衰退産業です。そこで行われる私達の活動は、登っていくというよりは潜っていくという感覚が近いように思えます。


もちろん売上げを追及することは商売する者にとっては必須の命題でそこから逃げることはできません。ですがそれと同じように古本屋としてエモい体験を追及していくこと(この言葉を使いたかっただけです(^_^;))。古本業界を駆け上るのではなく、息継ぎできるのかわからない所へ潜っていくこと。


踊る子供たちの隙間から見える杏月お姉さんの言葉に少し頷きながら、年末仕様の「からだダンダン」を見ていました。


もっと潜ってみようー。
ゆーらゆら、ゆーらゆら。

はなひ堂ブログ 2019年12月24日